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観光地化が貧しい村にもたらすもの~ミャンマー、パガン遺跡にて

アジア

ミャンマーのイラワジ川沿岸に広がる平野一帯には、300もの仏教遺跡が点在するパガン遺跡というエリアがあります。アンコールワットやボロブドゥール遺跡と並んで、世界三大仏教遺跡のひとつに挙げられています。しかし、他の遺跡と違って、このパガン遺跡はいまだユネスコの世界遺産として指定されていません。

ミャンマーの一大観光地

photo credit: BAGAN – THAT BYIN NYU via photopin (license)

世界遺産として登録されていなくても、ミャンマー一の観光地であることに変わりはありません。本来は静かで、神秘的なこのエリアには、現在も、大型のツアーバスが毎日乗り込み、世界中の観光客がこの地を訪れています。

ミャンマーをはじめとする東南アジアなどの比較的経済力が弱い、発展途上国では、観光地
化が、現地の人々の暮らしを大きく変化させることがあります。私がミャンマーを訪れたのは今回が初めてでしたが、パガン遺跡で感じたことを書いておきたいと思います。

急速な観光地化

photo credit: _MG_7852 via photopin (license)

ミャンマーにはマンダレーから入国しました。そして、マンダレー付近の小さな町を転々としたあとに、今回のメインでもあったパガン遺跡を訪れました。

パガン遺跡というのは平野の中に300を超える仏教遺跡が点在しているので、エリアとしてはかなり広い範囲にわたっています。観光地として、もっともポピュラーな場所なので、パガン村を上げて、観光に力を注いでいます。

まず、外国人がこのエリアに入るには、その村の入り口で入村料のようなものを払わなくてはいけません。この方法は、中国や、たしかタイなどでもよく使われています。彼らにとっては、突然外国人がやってきて、彼らの普段の生活ぶりや家屋に、ぶしつけにカメラを向けたりするのですから、お金を請求するのは当然かもしれません。

宿泊施設の不足

photo credit: PICT0403/Burma/Myanmar/ Chin Village/ Cool baby via photopin (license)

本来なら何でもない田舎の街なのでしょうが、さすがに現在は一大観光地とあって、ホテルやゲストハウスが立ち並んでいます。しかも、観光業の急成長により、宿泊施設供給が需要に追い付いていないため、ピーク時には予約なしだと、泊まるところも見つからないといいます。

観光客に対して、宿泊施設が不足しているので、当然競争の原理が働かず、宿泊代金は、他のミャンマーのエリアに比べて、相当高く設定されています。しかも、サービスも良くありません。レストランは、地元民向けのものはほとんどなく、外国人環境客向けのものばかりです。

ほとんどの観光客は、ツアーで移動するので、どこに行っても大型ツアーバスが行き来しています。私たちはバックパッカーなので、レンタサイクルでスポットを回ることにしました。しかし、ここでも、不愉快なことに、レンタサイクルの自転車はきちんと手入れがされていません。

レンタサイクルで遺跡をまわる

photo credit: img_0004 via photopin (license)

いったんこのエリアに入ってしまえば、各仏教遺跡はほとんどが無料で見学できます。ただし、大きなメインの遺跡は別に入場料を払う必要があります。

適当に見どころを確認しながら、自転車で回り、点在するパゴタに登っては写真をとったり、景色を眺めるという観光スタイルです。

この街に到着してから、料金に合わない宿泊施設、乗り心地の悪いレンタサイクルと、不愉快なことが続いていました。極め付けのことが起こったのは、ある小さなパゴタを訪れた時のことです。

荒れた農地

photo credit: BAGAN via photopin (license)

ここは、観光地と言っても、本来ここは地元の人々が普通に生活している土地です。おそらく、畑で作物を育て、ほとんど自給自足の生活をしていたのではないかと思います。

ある小さなパゴタを目指して、整備されていない道を自転車で走っていました。パゴタが見えているので、その建物を目指して進みます。レンタサイクルで回っているのは、私たちの他にもたくさんいます。舗装されていない道には、私たちと同じようにそのパゴタを目指したであろう、自転車のタイヤの跡がたくさんついていました。

そのタイヤの跡を追うように、進んでいくと、そのタイヤの跡は、明らかに他人の農家と思われる土地に入って行きます。ためらいながらも、そのタイヤの跡をたどっていくと、その農家の農地を横断するようにパゴタまでの道(タイヤの通過した跡)が伸びてしました。その畑は、荒れ果てていて、作物を植えた様子はあるものの、すっかり枯れてしまっていました。

ちょっと物悲しい気持ちになりながら、目指すパゴタに到着しました。すでに他の観光客が来ているらしく、数台の自転車が停まっていたので、私たちもそのそばに自転車を停めて、パゴタに登ることにしました。

物乞いの子供たち

photo credit: Boy on the move. via photopin (license)

パゴタの中には、階段があって、頂上に登れるようになっています。しかし、建物の中には明かりがないので、階段部分も真っ暗です。そのため、観光客が良く行くパゴタには、懐中電灯を持った子供たちが、観光客から小遣いを稼ごうと、数人たむろしています。

このパゴタにも、8歳ぐらいの女の子と、12歳くらいの男の子がいて、「ライトを貸します」というようなことを英語で言ってきました。私たちは、自分でライトになるものを持っていたので、子どもたちを無視してパゴタに登ります。

そのパゴタにはすでに数人の西洋人観光客がいて、写真を撮っていました。私たちが写真を撮ったり景色を眺めている間に、彼らは下へと降りていきます。その時、下で、子どもたちがその西洋人たちに「何かプレゼントをください」とねだっている声が聞こえました。

そして、彼らが自転車に乗って遠ざかっていくのが聞こえ、ふと気が付くと、そのパゴタにいるのは私たちだけになっていたのです。私は、なんだか嫌な予感がしました。パゴタの頂上からは、私たちが停めた自転車が見えないからです。

パゴタから降りて、「プレゼント」をせがむ子供たちを無視して、自転車にまたがったところ、タイヤがパンクしているのに気がつきました。心の中では「あー、やられた!」と思いましたが、後の祭りです。

自転車のパンク修理

photo credit: _MG_8020 via photopin (license)

幸いにも、というか、図られたように、近くに農家があります。そこには数人の地元民がいて、ただぼんやりとしているのが見えました。その農家に行って、タイヤがパンクしたことを伝えると、英語も理解できない地元民の割には物分かりがよく、事情をすぐ察知した様子です。

そして、ご丁寧に、裏からパンク修理用の道具を出してきて、親切にパンク修理してくれました。ただでその場を立ち去るわけにもいかないので、アメリカドルで1ドル相当の「お礼」を渡してその場を離れました。

自転車で遠ざかっていくときに、後ろから、母親がその子供たち(女の子と男の子)をむちでぶっているのが聞こえました。男の子は特にひどくぶたれていて、大泣きしています。おそらく、外国人から何も「プレゼント」をもらえなかったのでしょう。

私の自転車のパンクは明らかに、彼らの仕業なので、少なくとも1ドルの収入はあったわけです。でも、それだけでは満足できないということなのでしょうか。

観光が彼らにもたらしたもの

photo credit: Asia, Burma, Mandalay via photopin (license)

何度も繰り返しますが、本来はこの村は静かで、仏教遺跡がたたずむ神聖な土地だったはずです。荒れ果てた畑と、ずるがしこそうなほほえみ、むちでぶたれる子どもたちの泣き声、こんな村ではなかったはずです。

私たちのもともとの計画では、5日くらい滞在する予定でしたが、到着して翌日すぐにこの村を離れました。

私には、誰を責めることもできません。私自身も一観光客であり、観光地化の恩恵にあずかっています。ただ、私がとても行きたいと思っていたパガン遺跡のエリアで、こんなに悲しい気持ちになるとは想像していませんでした。