韓国で大流行して、やっと落ち着きを見せてきた「MERS(マーズ)」とは、一体何なのでしょうか。夏の観光シーズン前のひと騒動で、韓国では観光業を始め、経済的に大打撃を受けているといいます。「MERS(マーズ)」に関する情報をまとめてみました。
「MERS(マーズ)」って何?
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「MERS(マーズ)」とは「中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome」の頭文字を取ったものです。2012年に中東で確認された新型の感染症で、2003年に中国・香港で猛威を振るったSARS(サーズ)と同じ仲間のコロナウイルスが原因で起こります。
潜伏期間は2日から2週間とされていますが、2週間の隔離期間後に発症したケースもあります。
症状は、38度以上の高熱やせきなどが主な症状とされ、死亡率は40~50%とかなり高くなっています。SARS(サーズ)の死亡率は約9%だったことと比べても、異常に高い死亡率ということが分かります。
2015年の6月までに確認された感染者は1200人以上とされていて、死者は450人近くだと言われています。感染者は、中東をはじめ、韓国、アメリカ、フランス、イギリスなどの国でも確認されています。今の時点では日本での感染報告はありません。
MERS(マーズ)の感染経路
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MERS(マーズ)はMERSコロナウイルスによって、起こります。しかし、MERSコロナウイルスの実態は、まだよくわかっていないところが多いのが実情です。
その感染源は、コウモリだともラクダだとも言われています。今回、韓国で確認された感染経路は、ヒトからヒトへ感染したものです。結核のような空気感染はありませんが、飛沫や接触によって感染するとされています。
MERS(マーズ)コロナウイルスの予防接種やワクチンはまだ見つかっていません。
なぜ、韓国で大流行したのか
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韓国で、最初のMERS(マーズ)感染者が確認されたのは5月20日でした。中東のバーレーンなどに渡航した男性(68歳)がMERS(マーズ)に感染していることが発見されました。その後、6月2日には初の死者がでました。この時亡くなった二人は、最初の感染者の68歳の男性から二次感染した疑いが強いといいます。
韓国では、最初の感染者が入院していた病院で二次感染しただけでなく、最初の感染者と接触していない「三次感染」も起こっています。
このことで、韓国政府の対応の遅れが感染の拡大を招いたと批判されています。実際に、最初の感染者と接触した疑いのある家族や医療関係者1300人の隔離措置を行ったのは、最初の感染が確認されてから2週間後のことでした。
当初、感染者が出た病院名の公開にも、政府側は消極的でした。「混乱を招く」として、公開を拒否し続けていたのです。
さらに、感染者自身の危機意識の低さも、感染拡大に輪をかけたといえます。感染者の中には、発症前に中国に出張に出かけたり、自宅隔離していた患者の中には、ゴルフへ出かけた人さえいたそうです。
観光業中心に大きな打撃
MERS(マーズ)の影響で、すでに観光旅行のキャンセルが相次いでいます。その多くは中国人です。中国人は、2003年のSARS(サーズ)の教訓から、こういった感染症には敏感に反応するようです。日韓の航空便でも大幅に縮小することになり、夏の外国人観光客は、前年より80%も少なくなると予測されています。
影響を受けているのは、観光業だけではありません。国内消費も極端に落ち込んでいます。デパートや飲食店などの人が集まる場所の客足はぐっと減り、閑散としています。MERS(マーズ)が収束の方向へ向かいつつあるとはいえ、消費者の気分的に景気が元の戻るのには時間がかかりそうです。
海外旅行中の安全
海外旅行に出かける時の安全対策として、感染症への理解を深めることも大切です。感染症はMERS(マーズ)だけではありません。快適な旅を無事故で過ごすために、渡航先の安全情報は、常に最新の情報を仕入れるようにしましょう。
MERS(マーズ)の感染者が確認されている国
サウジアラビア、韓国、UAE、ヨルダン、カタール、オマーン、イラン、クウェート、イエメン、レバノン。
旅行者の感染が発見された国は、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、オランダ、ギリシャ、チュニジア、エジプト、アルジェリア、マレーシア、フィリピン、スペイン、トルコ、オーストリアなどです。
日本での感染者は認められていません(2015年6月現在)。